友人からの旅行土産がキーホルダーだったりすると、ありがとうと口では言いつつも、内心では舌打ちする私の性格が悪いということは、十分に自覚しているつもりだ。可愛い物ならまだいいが、地名なんか入っていた日には、すぐさま棚の奥底に入れられ、そのまま日の目を見なくなる。その地名に思い入れのあるのはそこに旅行に行った人だけであって、もらった私には何のエモーションもわかない。だけどキーホルダーって重要なんだ、と思わざるを得ない出来事がつい先日起こった。
家族で北海道旅行に出かけ、レンタカーを借りた。様々な観光地で北海道を満喫し、札幌散策を終えた私達は登別へと向かおうとした。最後の宿泊ということで、私達は少し豪華なホテルを予約していた。食事も豪華で、部屋には内風呂やマッサージチェアまで用意されている。札幌の散策を早めに切り上げて、登別でゆっくりくつろぐ――はずだった。
車に到着したとき、夫が「あれ?あれ?」と騒ぎだした。何だか嫌な予感を抱きながらも、「何ふざけてんのよー」と私はツッコんだ。だけど夫はニヤリともしない。真剣な顔で自分の服のポケットというポケットをまさぐったり、カバンをひっくり返したりしたのち、絶望的な言葉をつぶやいた。「――カギがない」。そのとき家族間に流れたあの沈黙を、きっと生涯忘れることはできないだろう。この広い札幌の地で、どうやってそれを探せばよいのか。いや、無理だろ。
それからレンタカー屋に連絡し、業者に来てもらって解錠してもらい、スペアキーを作ったのだが、とんでもなく無駄な時間とお金を費やしてしまった。登別に着いたときはすでに夜遅く、疲れ果てていた私たちは倒れるように床に着いた。全て後の祭りだけど、もしあのときレンタカーのカギにキーホルダーを付けていたら、失くすまではいかなかったかもしれない。これは人のお土産にケチをつけた天罰なのかもしれないと私は空を仰いだのだった。